受け継がれる、フィッシュフックに込めた想い
ハワイアンジュエリーは、正式の名前は「ハワイアン・エアルーム・ジュエリー(Hawaiian Heirloom Jewelry)」といい、「家宝となるべきもの」「代々受け継がれるもの」として、母から娘、またその娘へと、女性たちの間で広まっていきました。
では、男性たちの場合はどうでしょうか。
父から息子へと受け継がれていったもの、それは海洋民族である彼らにとってとても大切な釣り針を代表とする生活の道具や、または長い航海での道しるべとなる星をよむ力や、神の化身とされたクジラやウミガメなど、ハワイの自然から学ぶべき知識や物語でした。
そういったものたちがモチーフとなって、女性たちが身に着けるトラディショナルなハワイアンジュエリーとまたは違った、ラッキーアイテムとしての要素が高いアクセサリーになっていったのです。
中でも人気なのが、釣り針=フィッシュフックのモチーフです。
今では男性の間だけではなく、マリンスポーツを愛する人たちを中心に、ペアジュエリーやプレゼントとしても人気のモチーフ。では、理由を探っていきましょう。
父から息子へと受け継がれるフィッシュフック
漁で生活をする彼らにとって、フィッシュフックは大切な家族や仲間たちの命を繋ぐ、大切な道具です。
きちんと手入れされたフィッシュフックは、独り立ちする息子への大切な贈り物。先祖から代々受け継がれたスピリチュアルな存在だからこそ、今でもラッキーアイテムとして大切にされているのです。
その他にも、フィッシュフックにはその形状などの理由から様々な想いが込められています。その意味について、ひとつひとつ紐解いていきましょう。
「安定」「繁栄」の象徴
旧石器時代から人類の歴史の中で重要な役割を果たしてきたフィッシュフック、長い歴史の中で、木、動物や人間の骨、角、石や貝殻、さらに時代が進むと青銅や鉄など、様々な素材で作られてきました。
古代のハワイの人々にとって、アワビ、ムール貝など大型で厚みのある貝殻や、クジラの骨などから作られたフィッシュフックは丈夫で質が良く、何度でも使えるといった理由から、「安定」「繁栄」といった意味が生まれます。そしてその想いを込めて、父から息子へと贈られ、代々受け継がれていきました。
「幸運を釣り上げる」ラッキーアイテム
フィッシュフックはハワイ神話にも登場します。
ハワイ神話の英雄マウイは4人兄弟の末っ子で、実は釣りが苦手。そこで兄たちとの釣り勝負で冥界のご先祖様から授かった「魔法のフィッシュフック」を使い、なんと釣り上げたのは魚ではなく島そのもの。
巨大な島はその先端だけのぞかせて沈んでしまったのですが、その途中まで釣り上げた島がハワイ島ヒロ湾に浮かぶココナツ島で、外れて空に飛んでいってしまった魔法のフィッシュフックはさそり座の尾の部分になったと言われています。
なんとも壮大でロマンチックなお話ですが、この英雄マウイの神話から、フィッシュフックは「幸運を釣り上げる」といわれるようになりました。
「大切な人と離れない」「恋愛成就」の強い味方
釣りが好きな方ならご存知かと思いますが、フィッシュフックには先端の部分に「返し」と呼ばれる鋭く折り返した部分があります。無いものもありますが、この返しが釣った魚をしっかりと掛け、離さないことから、「大切な人と離れない」「幸運を逃さない」「恋愛成就」の意味が生まれました。
男性が身に着けるだけではなく、ペアジュエリーやプレゼントとしてフィッシュフックモチーフが人気な理由が良くわかりますね。
「海の旅の安全」を願うお守り
実はフィッシュフックの形状には向きがあり、お守りとしてフィッシュフックを身に着ける時に、「し」の字の先端が向いている方向が重要になってきます。
先端が心臓側、つまり左側を向くように身に着けると、誤って海に落ちて溺れた時に、フィッシュフックが心臓に引っ掛かり、海に沈むのを防いでくれると言われています。つまり、フィシュフックのアクセサリーは、海の上では大切な命を守るお守りなのです。
いかがでしたでしょうか。
古来、父から息子へと受け継がれてきたフィッシュフックが、ハワイアンジュエリーを代表する人気のモチーフとなり、ペアジュエリーやプレゼントとしても選ばれている理由。
それはファッションだけではなく、お守りとしての意味や、私たち人間の生活を支えてくれる海の恵みや生物に対する尊敬の気持ちが込められているからなのです。