絆を表す、マイレに込められた特別な想い

トロピカルフラワーが咲き乱れる南国ハワイ。到着した空港で一番に目に入るウェルカムレイをはじめ、ハワイのレイには色鮮やかなお花がたくさん付いているイメージですが、マイレという植物の葉を編み込んだ、グリーンだけのレイがあるのをご存知ですか？

様々なレイの中でも、マイレのレイは結婚式や記念日、卒業式などの人生の節目といえる日に使われる特別な存在です。

また、マイレはレイの材料としてだけではなく、その葉の形が文様やモチーフとなってハワイの文化に深く根付き、「絆」を表すモチーフとして調度品やハワイアンジュエリーのデザインの中にも度々登場します。

どうしてマイレのレイは、ハワイの文化の中で特別な存在になったのでしょうか。そして、マイレの葉に込められた想いとはどういったものなのでしょうか。

マイレとは

まず、マイレとはどのような植物なのでしょうか。

マイレは低い山の森林帯に自生する低木で、ハワイ各地に広く分府しています。自然の中では地味であまり目立たない植物ですが、葉や枝を磨り潰すと白い樹液が出てきて、バニラに似た良い香りがします。

今ではレイに使われるほとんどの植物が外来種であるのに対して、このマイレだけはハワイに根付き育った固有種。それだけでもハワイの人たちにとっては特別な存在です。

植物を使った最も初期のレイ

カヌーで海を渡り、ハワイ諸島に住み着いたポリネシアの人々がもたらしたレイの文化は、温暖で材料に事欠かないハワイで成熟しました。

ハワイでは、レイの材料となるものは神の化身である「キノ・ウラ」であると信じられており、様々な種類のレイが作られます。植物を使ったレイはグリー・レイと呼ばれていますが、その中でも最も初期のレイが、マイレの葉や樹皮を使ったレイです。

平和の象徴としてのマイレ

自然界の中では控えめな印象のマイレですが、ハワイでは「平和」そして「誓い」の象徴とされていて、その由来はハワイの歴史に深く関係しています。

カメハメハ大王によってハワイが統一されるより前、部族間の争いや闘争などの戦いを止める証としてマイレが奉納、献上されました。お互いの族長がほのかに香るマイレのツルを編み、完成した時に平和が訪れるとされたのです。

後に、この平和への願いが込められたマイレのパターンは、ハワイの君主政治が始まった最初の王座の背もたれにも彫刻されることになります。

神秘の力が宿るマイレ

文字を持たなかったハワイの人々が、神との対話のため、または体験や出来事を後世に伝える手段としていた踊り＝フラ。このフラもハワイの文化を語る上で非常に重要な存在ですが、このフラの女神ラカに捧げられた植物も、またマイレでした。

マイレには神秘的な力が宿ると信じられており、フラの学校であるハーウラの祭壇に供えられ、神を讃える唄の時には、マイレのレイを身に着けて踊ります。そしてフラで使われたレイはフラの女神カラのものなので、決して人にあげてはいけないそうです。

夫婦の絆を守るマイレ

そして、今日でも目にすることができるマイレのレイが使われる代表的なシーンと言えば、ハワイアンウェディング。
指輪の交換が習慣になる前、伝統的なハワイの結婚式では、マイレのレイでお互いの手を結び、誓いをたてました。今では花婿が首からオープン・レイ（輪ではなく、開いた1本の紐状になったレイ）をかけるのが一般的です。

実はこの風習には少し悲しい神話が隠されています。

昔、悪知恵の働く漁師との結婚に哀しみ沈んだ女性が、マイレのレイで正装すると崖から身を投げてしまいます。強風の吹き荒れる日には彼女の嘆き悲しむ声が聞こえ、マイレの香りが強く辺りに漂ったといいます。それ以来、お供え物の一つとしてマイレを祭壇にささげ、夫婦の絆を未来永劫守ることを天に誓う象徴として、マイレのレイが使われるようになったといわれています。

 

 

いかがでしたでしょうか。

マイレは、古くからハワイの人々にとって人と神を結ぶ存在であり、平和と神聖なる絆の象徴。そんな特別な理由から、今でも人生の大切な日にはマイレのレイが使われているのですね。

最後に興味深いものとして、ハワイ流のオープンセレモニーのテープカットをご紹介します。
ハワイではテープの代わりにマイレを編んだものが使用されます。ただしレイをカットするのはよくないことなので、編まれたレイをほどくというのがハワイのテープカットになるそうです。
現代のハワイにも引き継がれている、素敵な風習ですね。