マナが宿る、歴史の中のレイのお話

マナが宿る、歴史の中のレイのお話

ワイの空港に降り立つと一番初めに目に入る、南国の花々を使った色鮮やかなウェルカムレイ。いかにもハワイのイメージですが、実はその材料の花々は、19世紀以降にやってきた旅行者や移住者たちがもたらしたものです。

古来、輪状のアクセサリーを首や頭につける風習は世界各地で見られますが、レイとしてハワイで成熟した文化は、元々はカヌーで海を渡りハワイ諸島に住み着いたポリネシアの人々のものでした。

では、なぜハワイではここまでレイの文化が花開いたのでしょうか、そのルーツを紐解きながら、古代のレイとはどんなものだったのか探求してみましょう。

ハワイの豊かな自然がもたらしたもの

ハワイに移り住むより以前から、古代のポリネシアの人々は、マナ(神聖な力)を閉じ込めた骨や歯、貝殻などで装身具を作っていました。人々はそれを祈りや儀式に使ったり、大切な人に贈ったり、階級や職業を表すため、またはラッキーアイテムとして身に着けたりと、用途は様々だったかもしれません。

そんな彼らが海を渡りたどり着いた新しい土地ハワイでは、レイ作りに適した植物が生い茂り、花が咲き乱れ、カラフルな美しい鳥たちがたくさん住んでいました。ポリネシア人たちはさぞ喜んだことでしょう!
こうして、この美しい島ハワイで、様々な素材を使ったレイが作られるようになっていくのです。

では、古代のレイにはどんなものがあったのか、ハワイの歴史を学ぶ上でとても重要なレイをご紹介します。

クジラの歯のレイ

ハワイでは、レイの材料となるものは神の化身である「キノ・ウラ」であると信じられており、特にサメやクジラの歯、さらにアリイと呼ばれた酋長や王族など身分の高い人々の髪の毛には強いマナが宿るとされていました。

このクジラの歯のレイは身分の高い人々にのみ着用が許されたレイで、「レイ・ニホ・パラオア」と呼ばれました。「ニホ」は歯、「パラオア」はマッコウクジラの意味です。

首にかける部分はアリイ本人の髪の毛を細かく三つ編みにしたものを束にして、ペンダントの部分はマッコウクジラの歯を舌の形に削ったものを使用しています。

文字を持たなかったネイティヴハワイアンの社会、アリイの発する言葉にはマナが宿っているということを象徴するレイで、クジラの歯の部分が大きいものほど、発言力が強い人とされていたそうです。

鳥の羽のレイ

「レイ・フル・マヌ」と呼ばれた鳥の羽で作ったレイ、こちらも身分の高いアリイのためのものでした。アリイたちは権力を示すために、色鮮やかな羽や模様のレイを競って身に着けたといいます。

ハワイ固有の鳥であるアパパネやイイヴィなどの赤い羽や、マモやオーオーなどの黒と赤、黄色の羽が用いられ、マモの濃い黄色の羽が最も価値が高く、次がオーオーの明るい黄色、次に続くのがアパパネとイイヴィの赤い羽です。(残念ながらマモとオーオーは絶滅したとされています。)

マモはほとんどが黒い羽で覆われて、鮮やかな黄色の部分は腰の位置のほんの一部。この貴重な黄色と赤の羽を使ったアリイの装身具は、他に「アフウラ」と呼ばれるケープと「マヒオレ」と呼ばれる帽子もあります。代表的なアフウラはビショップ博物館にあるカメハメハ大王のもので、長さが約140cm、広げた幅が240cm。

ハワイの人々は羽を採取するために鳥を傷つけることはせず、少し羽を取った後に再び放つか、抜け落ちた羽を集めました。その貴重な羽で大きなケープや帽子、そしてレイを作るのですから、偉大なアリイの存在が計り知れます。

植物のレイ

ポリネシアの人々がレイの材料にはことかかないハワイに到着して、植物で最初に作ったレイは、葉やツルを使ったグリーン・レイといわれています。
植物の葉を使ったレイにはそれぞれ役割があり、最初に作られたマイレのレイは休戦の誓いや平和のために交わされ、ティ(キー)のレイは厄除けや幸運のシンボルとして、ポーフエフエのレイは漁やサーフィンの時に良い波が立つようにとお祈りする時に使われました。

色鮮やかな花を使ったフラワー・レイは19世紀以降、外来の植物がハワイに持ち込まれてから発展したものです。ですがヨーロッパから新しい文化が入ってくると、ハワイの伝統的な価値観が否定されてしまいます。それまでは宗教的な目的で儀式などに使われてきた本来のレイの意味は変わっていき、セレモニーや冠婚葬祭などで親愛を表す手段として使われるようになっていくのです。

代表的な例として、空港で観光客にレイを贈るお馴染みのシーンがあります。これは、空の旅の前の船旅が主流だった時代に、船主がホノルル港に到着した客にレイを渡したのが始まりとされています。ハワイのホスピタリティーあふれる素敵な習慣ですね。

 

 

いかがでしたか。
今ではレイといえば色鮮やかな花を使ったフラワー・レイが主流となっておりますが、ハワイの自然崇拝信仰の歴史の中では、マナが宿った様々な素材を使ったレイが作られてきました。

欧米化にともない伝統的なハワイのレイの素材は変わっていきます。
しかし、それでも自然を通してマナを得る、そして感謝の気持ちや敬愛の念を込めて相手にレイを贈る。そしてその時の気持ちこそが、ハワイの言葉「アロハ」であるという概念は、決して変わることはないのです。

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